JAPAN INNOVATION DAY 2023 開催。多彩なセッションと展示を通じ、先端テックの体験やビジネスマッチングの機会を創出 :

 ASCII STARTUPは2023年3月3日、赤坂インターシティコンファレンスで、「JAPAN INNOVATION DAY 2023(JID 2023)」を開催。76社のスタートアップ、テック企業によるブース展示や、オープンイノベーション、WEB3、知財戦略などトレンドを抑えたビジネスセッションのほか出展するスタートアップ企業によるショーケースを実施。国内先進スタートアップが開発した先端技術の体験やビジネスマッチングの機会を提供した。

JAPAN INNOVATION DAY 2023 開催。多彩なセッションと展示を通じ、先端テックの体験やビジネスマッチングの機会を創出 :

 オープニングセッション「ASCII STARTUPが見据える3年先のイノベーションシーン」では、ASCII STARTUP編集長の北島と副編集長のガチ鈴木が登壇。ASCII STARTUPが日々取材している「3年先に当たり前になっている製品や技術」について、スタートアップ業界の最新の動向をふまえて語った。

左からASCII STARTUP編集長 北島、副編集長 ガチ鈴木

 今回のメインテーマである「地域イノベーション」について、ガチ鈴木は「実証実験やイノベーション創出の場として各地域のスタートアップエコシステムに注目している。2025年の大阪・関西万博に向けて、各地域のテクノロジーの発展に注目したい」と述べた。北島も「首都圏だけではなく、各地域のイノベーションを応援したい」と語った。

 また今年度にASCII STARTUPが取材を通して注目したキーワードとして「Web2.5」「MaaS」「自治体DX」「出向企業スタートアップ」「リアルコミュニティー」「インキュベーション」「SaMD」などを挙げた。

「Web2.5」に関して北島は「ブロックチェーンの浸透には、Web2的な既存の市場と技術を融和させることが重要だ」と述べた。また「インキュベーション」に関してガチ鈴木は「国内市場のパイを奪い合うのではなく、海外でビジネスを展開することを前提とした起業家育成の流れが出てきている」と述べた。

JAPAN INNOVAITON DAY 2023 スタートアップショーケース
VOl.1 ~AI編~

ピッチをする株式会社WizWe木暮正利執行役員

 JID 2023の出展ブースからAIに関する5社が取り組みを紹介した。登壇企業は以下の5社だ。

●株式会社エイ・オー・テクノロジーズ
●横濱ベイサイドギターワークス合同会社
●株式会社WizWe
●NABLAS株式会社
●株式会社ミライ菜園

地域活性のためのスタートアップ・エコシステム

左からガチ鈴木、横浜市新産業創造課の南野氏、広島県イノベーション推進チームの歳森氏

「地域活性のためのスタートアップエコシステム」では、内閣府が選定した「世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成」の発表から3年が経ち、各地域のスタートアップ支援施策がどのような広がりを見せているのか、また、次世代に向けた取り組みなどが紹介された。

 横浜市 経済局新産業創造課の南野ショナー氏は横浜市のスタートアップ支援「YOXO(よくぞ)」や、起業家と海外コミュニティの交流を促進する「スタートアップ・グローバル展開プログラム」を紹介した。

 広広島県 イノベーション推進チーム主任の歳森靖子氏は、10億ドル以上の急成長を目指して広島から立ち上がる企業を支援する「ひろしまユニコーン10」や海外で挑戦する起業家を育成する「Hiroshima Global Unicorn Incubator」などの取り組みを紹介した。

 各自治体が窓口になることでスタートアップと既存企業の共創や実証実験が多数実施されていることがわかった。また世界に挑戦するスタートアップのインキュベーションに対する取り組みに、各自治体が注力し始めている現状が垣間見えた。

若手起業家はなぜWEB3で起業するのか?

左からPivot Tokyoの満木氏、渋谷区産業観光文化部の中谷氏、株式会社ガイアックスの西村氏

「若手起業家はなぜWEB3で起業するのか?」ではWeb3の起業やオフラインの交流などが盛んになる一方、規制緩和が進まずに起業家が海外に流出している現状を、業界の先駆者3名が語った。

 Pivot Tokyoの満木夏子氏は海外におけるWeb3の現状を紹介。「Web3は冬の時期と言われているが、海外の大企業はインフラとしてWeb3の社会実装を進めている。国内Web3はテクノロジーに注目されているが、テクノロジーを用いてどんなコンテンツを作るかに注目する方が日本の強みが生かせると述べた」と述べた。また、「Web3はテクノロジー自体が注目されがちだが、テクノロジーを用いてどのようなコンテンツを作るのかに注目するほうが、日本の強みが生かせる」と述べた。

 渋谷区役所、産業観光文化部の中谷氏は「渋谷でWeb3企業を支援する中で規制緩和に取り組む必要がある。海外のWeb3コミュニティに参加している日本人も国内で活動したい気持ちもあると聞いている」と語った。

 株式会社ガイアックス、PlanetDAO事業部長の西村氏は「一般的にWEB3のコミュニティはオンラインだが、オフラインのマッチングの場を提供することで、さらにWeb3の発展が加速する」と述べた。またPlanetDAOの取り組みを紹介しながら「地域の魅力とNFTを掛け合わせる中で、Web3の技術を用いて本質的に何をしたいのかを地域のキーパーソンと話すことが重要だ。」と語った。

JAPAN INNOVAITON DAY 2023 スタートアップショーケース
Vol.02 ~若手&学生起業家編~

株式会社LeanGo 岡坂拓哉氏

 JID 2023の出展ブースから次世代を担う若手&学生起業家の企業4社が取り組みを紹介した。登壇企業は以下の4社だ。

●Fiom合同会社
●株式会社ABABA
●レイワセダ株式会社
●株式会社LeanGo

オープンイノベーションプログラム
“ExTorch”における多様化する社会、地域課題解決に向けた取り組み
by NTTコミュニケーションズ

左からNTTコミュニケーションズ株式会社木付氏、港氏、野坂氏、株式会社マリスcreative design和田康宏代表取締役

「オープンイノベーションプログラム“ExTorch”における多様化する社会、地域課題解決に向けた取り組み by NTTコミュニケーションズ」では、NTTコミュニケーションズのオープンイノベーションプログラム「ExTorch(エクストーチ)」と現在共創を進めている九州工業大学発スタートアップ、マリスとの事例が紹介された。

「ExTorch」の事務局であるイノベーションセンターは「ビジネス・デベロプメント」「テクノロジー」「クリエイティブ」「ストラテジー」の四位一体の体制で、新規事業創出、新規事業開発促進、ビジネスプランナー人材の育成などを実施している。

「ExTorch」は自社のアセットとパートナー企業の技術を掛け合わせることで、より大きな社会課題の解決に取り組んでいる。その一例がマリスとの共創事例だ。マリスは視覚障がい者向けのサポートデバイス「SEEKER」をNTTコミュニケーションズと九州工業大学の3社で共同開発している。「SEEKER」は視覚障がい者が頭部に取り付けることで、外出時の危険察知ができるデバイスだ。NTTコミュニケーションズは「SEEKER」の開発にモバイルネットワークの提供やデータの蓄積、利活用などの側面から伴走支援する。

 SEEKERは今後の展望として、生体異常検知や体温計測といった疾患領域、危険通知や音声解読といった聴覚領域など、総合的なソリューションとして提供することで、増加している高齢者にも提供できるサービスを目指す。

 また、NTTコミュニケーションズは知的財産方針を明確に打ち出すことで、大企業がスタートアップ企業の技術を一方的に吸収するのではなく、双方で丁寧にすり合わせをしながら事業拡大を目指す姿勢を示している。

大手企業とスタートアップがwin-winな関係を築くには?

左から株式会社InnoProviZation残間氏、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ笹原氏、三菱地所株式会社橋本氏

「大手企業とスタートアップがwin-winな関係を築くには?」では、大手企業とスタートアップが共創を進めるうえで、大手企業側の担当者として知っておきたい共創のコツが語られた。

 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ笹原優子代表取締役社長は「スタートアップを見つけても事業部が受け取ってくれない。日頃から事業部とコミュニケーションを取ったり、発信したりすることで関係構築をしておくことも重要。また、協業ではなく共創という言葉を使うことで、より未来を見据えたオープンイノベーションに取り組んでいる」と語った。

 三菱地所株式会社 新事業創造部 橋本雄太主事は「オープンイノベーションといっても足元のビジネスを固める、新しい事業を創出するなど、目的がまちまち。短期的な課題解決は事業部に握ってもらって、新事業創造部は30年後などの時間軸で話を進める工夫をしている。また、人生をかけて取り組んでいるスタートアップにリスペクトを示しながら、双方の意志を大切にして共創を進めることが重要だ」と述べた。

 ここからは展示ブースの模様をピックアップして紹介しよう。

 今回は「IoT/HARDWARE」「AI」「XR」「HEALTHTECH」などの幅広い分野から先進的な技術やサービス、製品を有する76の企業・団体が出展した。イノベーション推進に取り組む企業関係者や新規事業の創出、投資に取り組む担当者、投資家が来場。展示やデモにより、テクノロジートレンドの最先端を体験した。

ドローンのプラットフォームを構築するブルーイノベーション株式会社

 ブルーイノベーションは顧客のニーズに合わせて、ドローンやロボットのプラットフォームを構築し、危険な箇所の点検や工場の巡回、災害時の運搬作業などを安全かつ効率的にする。

 クライアントは工場、プラントから自治体、省庁まで多岐にわたり、蓄積したノウハウを生かして、さらに活用の場を広げている。

廃棄食材を利活用するfabula株式会社

 fabula株式会社は規格外野菜や消費期限切れの弁当を、器や車の足止め、建物の屋根として生まれ変わらせることで、廃棄食材の利活用を進めている。廃棄食材を圧縮し、繊維と糖分のバランスを調整することで、コンクリートの曲げ強度の約4倍の耐久性も実現した。2025年の大阪万博では会場の屋根として使用される計画もある。

VRで治療の不安を軽減する株式会社xCura

 xCuraはVRによるペインコントロールに取り組む。患者が治療中にVRゴーグルを装着し、映像とナレーションで呼吸の長さやタイミング、筋肉の弛緩をコントロールするをことで、麻酔で解決できない痛みの緩和を実現する。