大阪工業大学、台湾の国立陽明交通大学の研究グループは、光合成細菌のメカニズムに着想を得て、光を受けた分子のエネルギーの流れを制御する新しい材料を開発した(ニュースリリース)。
(写真)空気中で実現した円偏光アップコンバージョン発光
高分子が形成するらせん状のナノ空間を利用することで、低エネルギーの光を高エネルギーの光へ変換する「フォトンアップコンバージョン(TTA-UC)」と、光の偏光状態にらせん構造が反映される「円偏光発光(CPL)」を同時に実現した。さらに、TTA-UCの効率を低下させる酸素が存在する空気中でも発光を観測することに成功した。
光合成細菌の一種である緑色硫黄細菌は、限られた光エネルギーを効率よく利用するため、色素分子を規則的に集積させた光捕集構造を形成している。こうした生体内の仕組みでは、分子の配置や周囲のナノ空間が、光エネルギーの効率的な伝達に重要な役割を果たす。
研究グループはこの仕組みに着目し、立体規則性の異なる高分子から形成される複合錯体を利用して、光を吸収する捕光分子と発光分子を取り囲むらせん状のナノ空間を構築した。この空間内では、捕光分子が光を吸収して励起状態となり、そのエネルギーが発光分子へと移動する。
さらに、捕光分子から発光分子へのエネルギー移動だけでなく、発光分子間のエネルギー移動も高速化できることを見いだした。これにより、酸素によって励起エネルギーが失われる前に分子間でエネルギーを受け渡すことが可能となり、空気中でもTTA-UCを実現した。また、らせん状のキラルなナノ空間を利用することで、光の電場が右回りまたは左回りに回転する円偏光発光も同時に実現した。
TTA-UCは、通常では利用しにくい低エネルギーの光を、より高エネルギーの光へ変換できる技術であり、太陽光の有効利用などへの応用が期待される。一方、円偏光発光は、偏光を利用する光情報デバイスなどへの展開が見込まれる。
今回の成果は、発光分子そのものの構造を変えるのではなく、分子が存在するナノ空間を設計することで、エネルギー移動と発光の偏光状態を同時に制御できることを示したもの。今後、ナノ空間に組み込む分子の種類や組み合わせを変えることで、さまざまな波長の光を利用・変換する光機能材料の開発につながると期待されるしている。


