炎症が筋力を弱める仕組みの一端を「三次元培養筋モデル」で解明-大阪工大ほか – QLifePro 医療ニュース

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2026年04月22日 AM09:20

従来の平面培養では難しかった「収縮力」の評価を立体モデルで実現

大阪工業大学は3月23日、炎症によって筋力が低下する仕組みの一端を、生体に近い「三次元培養筋モデル」を用いて明らかにしたと発表した。この研究は、同大工学部の中村友浩教授、神戸学院大学の田村行識講師(栄養学部)および水谷健一特命教授(大学院薬学研究科)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Bioscience and Bioengineering」にオンライン掲載されている。


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生体の筋肉は立体的な構造の中で規則正しく並び、腱に引っ張られながら力を発揮しているが、従来の平面的な細胞培養では実際の筋肉の構造や力の出方を十分に再現することが難しかった。研究グループが用いた三次元培養筋は、コラーゲンの中で筋細胞を立体的に培養し、人工腱で両端を固定して張力をかけた人工筋組織である。電気刺激を与えることで実際に収縮し、生体に近い構造と機能を再現できる。顕微鏡下で収縮の様子を観察し、その力を数値として正確に測定できる点が大きな特長だ。

TNF-αの作用で収縮力が約90%低下、サルコメアの乱れや剛性低下も確認

研究グループは、この三次元培養筋に炎症性物質であるTNF-αを作用させ、どのような変化が起きるかを検証した。その結果、筋肉の収縮力は時間とともに大きく低下し、72時間で約90%下がることが確認された。さらに詳細な解析により、以下の変化が明らかになった。

  • 速く収縮するタイプの筋線維が細くなり、減少する
  • 筋肉の収縮を支える微細な構造(サルコメア)が乱れる
  • 筋肉の剛性が低下する
  • 筋肉の内部構造を保つ因子や、収縮に必要なカルシウム調節に関わる遺伝子の発現が低下する など

特に筋肉の剛性低下については、筋の土台を形成するコラーゲン関連遺伝子の発現低下と併せて考えると、筋の構造的な強度が弱まることが筋力低下の一因になっている可能性が示唆された。今回の研究結果は、炎症が単に筋肉を萎縮させるだけでなく、筋肉が力を生み出す仕組みを多方面から阻害している可能性を示している。

サルコペニアやがん悪液質の病態解明、創薬評価の代替法としても期待

慢性的な炎症は、加齢に伴うサルコペニアや、がんに伴う悪液質などにおける筋力低下と深く関わっていることが知られている。しかし、その詳細な分子機構や構造変化を直接検証できる実験系は限られていた。

今回の研究は、炎症による筋力低下の具体的なメカニズムを明らかにしただけでなく、生体に近い三次元培養筋モデルの有用性を実証した点で大きな意義を持つ。また、このモデルは動物を用いずに筋肉の収縮機能を評価・再現できる実験系であり、動物実験の代替法としても倫理的な観点から優れている。今後は、筋力低下のさらなる原因解明や新規治療法の開発、創薬スクリーニングなどへの幅広い応用が期待される。(QLifePro編集部)