大阪の「ものづくり技術」で宇宙機の製造需要に応える–大阪商工会議所がコミュニティ醸成 – UchuBiz

特集

2025.12.01 09:00

藤井 涼(編集部)

 衛星のサプライチェーン構築や宇宙食の開発など、日本各地で宇宙産業の発展に向けたさまざまな取り組みが生まれている。また、北海道大樹町や福島県南相馬市などでは、広大な土地を生かした宇宙港や実証施設の建設が進んでいるところだ。

 では、日本の三大都市である“東名阪”ではどうか。東京には多くの宇宙スタートアップが集まりコミュニティが生まれている。愛知には月面探査車「ルナクルーザー」を開発するトヨタ自動車の本社や三菱重工の基幹ロケット工場がある。唯一、これまで宇宙のイメージが薄かったのが大阪だが、実は2024年から商工会議所を中心に宇宙産業の振興に注力し始めている。

 もともと大手製造企業を支えてきた大阪は、日本有数のものづくり密集地であり、中小製造業の多さや技術蓄積は全国トップレベル。実際、JAXAの月面着陸機「SLIM」に金属部品を提供した大阪冶金興業や、流体制御機器を宇宙機向けにも提供するIBSなど、すでに個社単位では宇宙業界に参入している地元企業もある。

 一方で、地域全体でのムーブメントにまで発展していないことや、宇宙開発の経験者が少ないことが課題だと、大阪商工会議所 産業部の西田昌弘氏と倉骨彰紀氏は話す。

大阪商工会議所 産業部の倉骨彰紀氏(左)と西田昌弘氏(右)

 そこで2024年に発足したのが「宇宙ビジネスクラスター」。次世代技術や産業分野におけるイノベーションの促進を目指し、各テーマにおいてビジネスマッチングや実証などの機会を提供するプラットフォーム「次世代テックフォーラム」の一環として、宇宙に特化した分科会を立ち上げ、JAXAなどとも連携をして、宇宙から広がるさまざまなビジネスの可能性を議論しているという。

未来社会を形作るイノベーションの創出に取り組むプラットフォーム「次世代テックフォーラム」

 宇宙業界の経験者の知見をとりいれたり、各地とのネットワークを広げたりするため、宇宙ビジネスクラスターのイベントでは、宇宙食に取り組むフジッコや、月面バイクを開発するRIDE DESIGN、衛星データを活用するスカパーJSAT、サグリ、天地人など、主に大阪以外の宇宙関係者を招き、地元の参加者と交流の機会を設けているという。直近では12月18日に宇宙・防衛産業のサプライチェーン強化に向けて新規参入、異業種連携の可能性を探るクラスター会議を開催する予定となっている。

 活動はまだ始まったばかりだが、倉骨氏は「宇宙ビジネスクラスターを立ち上げて2年目に入り、大阪での機運も徐々に高まっている。大阪には技術力の高い中堅・中小企業が多いが、いい意味でまだ特定の分野にフォーカスしておらず、全国からの幅広い宇宙領域の製造需要に応えられると思っている。ぜひ大阪内外の多くの方と連携していきたい」と展望を語った。