大阪 クリニック放火事件 死亡の容疑者を書類送検 捜査終結へ | 大阪 ビル放火事件

去年12月、大阪 北区のビルに入るクリニックが放火され、巻き込まれた26人が死亡した事件で、警察は16日、死亡した容疑者を殺人と放火などの疑いで書類送検しました。
容疑者は死亡しているため、今後不起訴となる見通しで、事件の詳しい動機が特定されないまま、捜査は終結することになります。

去年12月17日、大阪 北区のビルの4階に入る心療内科のクリニックが放火された事件では、巻き込まれた26人が死亡しました。

警察は、この26人とは別に事件で死亡した谷本盛雄容疑者(61)を捜査してきました。

これまでの調べで、クリニックの防犯カメラには谷本容疑者がガソリンをまいて火をつけ、燃え上がるまでの一部始終が写っていたということで、警察は、16日午前、殺人と放火などの疑いで書類送検しました。

谷本容疑者は事前に計画したうえで強い殺意を持って事件を起こしたとみられる一方、クリニックとの間にトラブルは見つからなかったということです。

警察によりますとこれまでの捜査で、クリニックの関係者や容疑者と接点があった可能性のある人などおよそ200人から話を聞きましたが、ここ数年で交友関係があった人は見つからなかったということです。

また、口座の残高はゼロになっていたということで、警察は社会から孤立し経済的にも困窮する中、無関係だった多くの人を巻き添えに自殺を図ったとみています。

このほか、事件の直前に現場から3キロ余り離れ、容疑者が直前まで暮らしていた大阪 西淀川区の住宅で起きたぼやについても、容疑者が放火した疑いがあるとして合わせて書類送検しました。

容疑者は心肺停止の状態で搬送され、取り調べを受けることなく死亡していて、今後不起訴となる見通しです。

事件の詳しい動機が特定されないまま、捜査は終結することになります。

遺族の代理人「静かに見守ってほしい」

書類送検について、事件で亡くなった被害者のうち1人の遺族の代理人を務める奥村昌裕弁護士が「被害者、遺族にとって送検は節目ではありません。悲しみは時間によって癒えるものではなく、気持ちの整理もできていない遺族がほとんどだと思います。裁判が開かれない本件で、検察官は、引き続き被疑者の動機など真実を明らかにするよう捜査を尽くすことが重要な役割ではないでしょうか。周囲の方々は、静かに見守ってほしいと思います」というコメントを出しました。

別の遺族の代理人「国や地方自治体は最大限 遺族のサポートを」

書類送検について、事件で亡くなった別の被害者の遺族の代理人を務める平瀬義嗣弁護士が「遺族は、突然に家族を殺害されたうえ、なぜ事件が発生したのかという理由も知ることができず、加害者にその法的責任を問うこともできないという不条理極まりない立場に置かれている。遺族の受けた苦痛が完全に癒えることはないが、国や地方自治体には、物心両面において最大限遺族の被害回復のためのサポートをすることが望まれる」というコメントを出しました。